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フィールドワークの楽しみ方と一つの嘘

2017/01/02  14:47
12
新年あけましておめでとうございます。
今年もマンガを楽しんでもらえるようガンガン更新して
参りますのでよろしくお願いします。


っと年始の挨拶はこれくらいにして。


今回の記事ですが、年末から最近まで我慢して来ましたが
そろそろ限界が近いので誰得な話題をブッパします。


神様セカンドライフに込めている(つもりの)もの。
それは秋田の魅力や神道や土着信仰の魅力です。

そしてもう一つ。

フィールドワークの楽しさ。

これもこめているものの一つです。








もう限界です

これ以外にも色々ありますが口火を切ると
止まらなくなりそうだったんで我慢していましたが
もう無理。

そもそもフィールドワークの趣味を話し合える友人や
場があれば私は神様セカンドライフを描くことはなかったと
思います。

ってわけで今回は

「私が楽しいと感じているフィールドワークの魅力」

これについて(正月から?)ブッパしていきたいと思います。


フィールドワーク(英: field work)は、ある調査対象について学術研究をする
際に、そのテーマに即した場所(現地)を実際に訪れ、その対象を直接観察し
関係者には聞き取り調査やアンケート調査を行い、そして現地での史料・資料の
採取を行うなど、学術的に客観的な成果を挙げるための調査技法である。

                           フィールドワーク - Wikipediaより




私は神社や史跡をたどりながらあれこれ考えるのが
好きです。

で、この手の話をするには神社の話や神様の話題に
なりがちです。

そこに帰ってくる言葉は…

「宗教やってんの?」
「○○みたいなの?(カルト名)」
「意味分からん」

全てがそうではありませんがこういった展開が
多いです。

最初のうちは反論していましたが、いつからか
自分からフィールドワーク(以後FW)の話題を
することはなくなりました。

こういった長年の言いたい欲を叩き込んだのが
神様セカンドライフです。


wikiの引用どうりFWとは調査です。

調査が面白いってのはピンと来ないと思いますので
実例をまじえ順に紹介していきます。


調査、言い換えれば点が線になり過去が
だんだん見えてくる感覚が近いです。


今回は実際に経験した事例から地図を交え
楽しさの一端が伝えられるよう頑張ってみます。


荒いですがこの地図をもとに話を進めます。
らくがき65
車でさーっと走って神社へ行く、それで分かる事は
このくらいです。

場所は秋田の山間の静かな農村。
「山」と書かれた先は砂利道で行き止まりです。

ここで引っかかるのは八幡神社。
小さな村なので社史もわかりませんし
神主も居ません。
中にあるのは村民の寄進者や氏子の名前が
記されている木版。
典型的な田舎の神社です。

八幡神社は稲荷社にもおとらない全国に分布している
神社で主な祭神は誉田別命(ほんだわけのみこと)こと
応神天皇です。

地域差はあるとおもいますが主に
武士階級から信仰された武芸の神様。
ざっくりとですがそういった神様です。


……なんで山の中の村に八幡様?


疑問が浮かんだなら、FW開始の合図です!


といっても手当たり次第調べていってもらちが
明かないのである程度推論をたてます。

らくがき65
おそらくここは昔からある古い村です。
曲がりくねった今の都市計画だとやらない道路と道祖神。
そして川(水)は農業の第一歩。
現代の新興住宅地なら川の側は選びづらいと思います。


あとは真ん中と左は同じ村、道祖神は境に置くので
右下の村は別物でしょう。
山側の道祖神がなぜあるのか気になりますが
ひとまず置いときます。


あとは神社をうろつきながら聞き込み開始です。

当然なぜ八幡様を祀っているかを知る人は居ません。
(成り立ちが古い村→正解、神社がある時点で
そりゃそうだとは言わないで~)

ただ右下の道祖神の正体を教えてもらえました。

「蒼前様」

本作ではおなじみですが一応注釈を。

馬の守護神で馬産地や農耕馬をたてる家庭で
祀られる事が多い神様、他には騎馬から馬芸
なども(ざっくり)

普通なら各家庭や神社の末社に収まっていますが
なぜか村のはずれでこの先は行き止まり。


そこで思い出したのが旅に使われる馬の守護から
転じて旅の守護神としての道祖神蒼前様。


「もしかしてこの先どこかに繋がっていたんですか?」


正解でした。
(土砂崩れと新しい道が出来たので雑木林になった)

つまり道祖神蒼前様もまた境の道祖神、旅人の守護者として
置かれていたわけです。


そして長い事話しているとお年寄りが子供の頃の
話をはじめました。


「昔は学校行くのに船で向こうに渡ってねえ…
たいへんだったんだよ~」


…ん?
ってことは…

らくがき66
これが昔の地図?
橋の道祖神は新しい物なんだ…(といっても
道祖神を立てる慣習が残る年代)

これ以上古い話はでてこないと判断し
引き上げます。


ここからは図書館などで古い資料を探します。

ですが手当たり次第は無茶なので推論を
立てます。


・村の苗字はよくあるみんな同じ苗字。
・八幡神社。
・古い古い道があった
・山間の一見不便な土地の農作地帯の村
・川幅の大きい所の橋は無視、むしろ農道や旧道から
人の移動を考える


狙うべき資料にあたりをつけます。



佐竹氏と当時の仮想敵
(佐竹氏、ざっくりいうと秋田県の城主です)



つまりここは行軍ルートで兵站地点でおそらく当時の
配下に与えた土地。
八幡神社はその配下の崇敬神社の分社。


この線で調べたところ…


大当たり!!


当然紆余曲折やハズレの仮説もありましたが
はしょっています(ダイジェスト



この過程で感じるワクワクやカタルシスが私なりの
フィールドワークの楽しみ方です。


今回の例でキーを握っていたのは
八幡様と蒼前様です。


神様。
私は当然見えた事も感じたこともありません。
しかしFWを通じて神様から当時の様子が見えてくる
ことを知りました。


見えずともその周りには人がいて出来事がある…
ならば逆に出来事や人から神様を想像する事は
可能です。

それが本作のたった一つの嘘、アオたちです。
ごっちゃ4倍サイズバナー
夢のない言い方をすれば彼らは嘘の存在です。

しかし徹底的に調査してFW的推論より生み出した
物語と歴史を持った土着的嘘です。

本作が言葉や史実にこだわるのはこういった背景から
くるこだわりからです。
祈りのようなあやふやで神秘的なもの(察して)を登場させず
現実的な展開や全てに元ネタを配置するのもそのせいです。




そして皆さんの暮らしている土地にも必ず物語が
眠っています。

そこには小さく目立たない神様もきっと存在しています。




ちょっと熱が漏れた瞬間。
すまぬ…すまぬ…(土下座



大事なことを一つ加えます。
FWをしても今回のように答えが出る事は稀です。

こういった痕跡は年代が進むほど消えていき
答えに辿り着く事が困難になります。

ですが足を使い推論を立て導いた答えは
真実はどうあれ導き出したあなたのものです。

歴史的にどうとか神道的にどうとか神代文字のような
マユツバであるとか関係ありません。
私に言わせれば記紀も歴史を下敷きにし目一杯
アレンジした偉大な創作物です。

歴史的・神道的に正しくなくともそれが元は偽であっても
それに寄り添い暮らした人、それを用いる神社があるなら
民俗学的に間違ってはいません(マユツバの正当性を
誇示するのは別)

嘘が広まり定着した、それだけのことです

むしろ興味深いとさえ思えます。
そしてそれこそが土着がかもし出す魅力の一つです。



以上、私がFWの何を楽しいと思っているのか少しでも
伝わったら嬉しいです。

みもふたもない言い方をするとゼルダで謎が解けた
瞬間が似ているような気がします(台無し




……

あーすっきりした!!

正月からとんでもない誰得な記事ですが
溜め込んでいたものを吐き出せたので
すっきりこん!

そんな当ブログですが今年もまた
お付き合いいただけたら嬉しいです。

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コメント

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名も無きハタハタ 2017/01/02 18:12

あけましておめでとうございます、いつもとても面白く思いながら拝読しております
今年も無理なさらず、でも更新楽しみにしております!

フィールドワーク話、楽しいです、ワクワクします
愛と熱を持っている人がする好きな物事の話は非常に魅力的だなぁと思います
自分も含め秋田の人間はシラフだと人見知りで自分のテリトリー外の相手には警戒しそうと思っていましたが、快く答えてくれる方が結構いるのだな、と、秋田の内に籠る気質をどうにかしないとと思いつつもそれが直らぬ人間の一人としては妙に安心してしまいました…

作者さんの描かれる漫画を読んで、小さい頃に年明けに真夜中に村の全ての社寺を家族で回っていた時に、親戚の(本家の)庭のウチガミ(家神?内神?)様にも手を合わせた事を思い出しました

また、民俗学も学生時代に専門ではないのですが講義でほんの少しだけかじった事があり、間違って伝わっているものにも別の価値があり、それも口承の醍醐味、と先生が仰っていたのを思い出しました

年々いろいろなものに興味をもつ事が少なくなってきていましたが、こちらのブログを拝見するとまた昔のような知りたいと思ったりワクワクする気持ちがわいてきて、今年は何かやってみよう!という気持ちになりました、ありがとうございます
長くなりましたが、秋田の冬はこれからですので、作者さんもどうかご自愛ください
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名も無きハタハタ 2017/01/02 18:13

No title

明けましておめでとうございます。
サイトの益々のご繁栄をお祈りします。

いや、また一つ作者様の癖(へき)が明らかに。
経験が無いと言いつつしっかりとした物語を紡げているのは
このバックボーンのゆえなのか、と感歎。
最新話でぐっと世界観が広がりましたが、破綻することなど断じてないでしょう。
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BBA結婚してくれ! 2017/01/02 19:21

No title

あけおめです!
年越し赤いきつねもお口に合ったようでよかったです><

Twitterを見るとシロちゃん宛ての献上品も預かったようで、そろそろアオ宛てにニンジン10kgとか届いてもおかしくない頃ですね!笑
ミヨシ様は日本酒が好きそうですけど、ヒトツメヤエあたりは何が好きなんだろう… 食べ物じゃなくてプラモとか書籍のほうが喜びそうな気もする。

FWに関しては、都会だとなかなか人の入れ替わりも激しくて難しそうですね。
というか記事中の地図の縮尺の5kmを二度見するレベル。範囲広すぎ…。
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- 2017/01/02 20:34

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もさ 2017/01/02 20:46

No title

開けましておめでとーございまーっす!!!!

やべぇ、Lv3さんがコナンになってるwww
でも悠久の歴史を思うとき、そこには想像を超えた何か、そして「想像をしすぎて超えちゃった何か」があるんだよねw
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LV3 2017/01/02 20:59

No title

>鍵コメ

読んでいただきありがとうございます!

一つだけ言わせて下さい。
なんというか神様に関しては見かたが偶像(アイドル)ではなく
事象や文化として見ているというか。
この辺上手く言う言葉が未だ分からないのが
辛いところでして。

ttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1085896945

ここにある捕虜と架空の少女。
この関係性が私が神仏と向き合うときの態度に
非常に近いです。

この辺いつかきちんとした言葉に出来たとき
まとめたいと思います。
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名も無きハタハタ 2017/01/02 23:04

No title

パッと思いついた各神様の欲しそうな物

シロ・・・生卵
ヒトツメ・・・工具セット
ばっちゃ・・・げぇむそふと
アオ・・・食べ物
お沢・・・筋トレグッズ(ダンベル・プロテイン)

アオはヒーロー変身セットとかどうなんだろう?
ばっちゃはボディブレードとか腹筋ローラーとか
健康グッズも好きそう。
与次郎は・・・?キツネの写真集・・・?故にカメラ・・・?
何か盗撮のニオイがしてきたので却下で。
泉光院は書道グッズとか、お掃除グッズとかどうだろう?
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名も無きハタハタ 2017/01/03 00:45

鍵付コメントの内容はわかりませんが、作者さんの返信コメントを見るに、「恥の文化」の議論などで出てくる「お天道様が見てる」「ご先祖様が見てる」という感覚に近いものかな?と勝手に推測しましたが、どうでしょうか?
本気で居ると信じている人は実際にはとても少ないだろうけど、でも何となくそこに何かが存在するかのような気がしてくる無下にできない感じが似ているかなと…
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LV3 2017/01/03 00:57

No title

>鍵付コメントの内容はわかりませんが

苦い事を書かれたわけではないんです。
私の神仏への考え方が意外だったみたいな。

自分の中で神様へのスタンスははっきりしているんですが
どう言葉にしたらいいか難しくて。

そこに居る事を自覚して襟を正すって態度は
見えているとも言えますし。
五感で補足したのかと聞かれればノーですし。

む、難しい…

でも文化として敬意を持って接してる。
これははっきりYESと言えます。

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名も無きハタハタ 2017/01/04 09:00

郷土史家とか歴史家みたいな感じー。

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