アオの旅SSをいただいたので足してみました!
2022/04/15 18:21
今回は、いただいたSSに挿絵を付け皆様にご紹介といういつものやーつです。
早速ですがどうぞ!!
作:SSスレの隠れ秋田県民
絵:秋田LV3
兵庫県、多可郡。
朝霧に覆われた山道を、一人の女が歩いていた。
トレーナーにジーンズ、スニーカーという軽装である。
ショートカットの髪が、風を受けてなびいた。
早朝、薄闇の中に光が差してくる。
霧が徐々に晴れ、目を凝らすと、南の方に家並が見えた。
「もうすぐだな」
張り詰めた顔で、女は呟いた。
****
しばらくして、町の中に困り顔の女がいた。
女には、捜し物があった。
町に入って色々と巡ったが、それが見当たらないのだ。
空はすっかり明るくなっていた。
(ここにあると思ったんだけど)
やはり、誰かをつかまえて尋ねるべきだろうか。
ともかくもう少し探してみようと、女は早足になった。
そして、四つ角に差し掛かったところで、何かとぶつかった。
見ると、ジャンパースカート姿の少女が、尻餅をついていた。
ものもらいでもあるのか、右目にガーゼの眼帯をしている。
「おっと…大丈夫?」
女が心配すると、少女はスカートを払いながら立ち上がった。

「危ないやんか、姉さん。気ぃつけや」
「ご、ごめん」
少女のしっかりした様子に、女はたじろいだ。
余所者とわかるのか、少女はじっと女を見つめている。
居心地の悪さに堪えきれず、女が口を開いた。
「ところでさ、この辺に神社はないかな」
「神社?」
「天目一神社っていうんだけど…」
子供に聞くようなことではないな、と我ながら思った。
「知っとるよ」
事も無げに答えると、少女はすたすたと歩いて行く。
どうやら案内するつもりらしい。
女が慌てて後を追う。
「あ、オレはアオっていうんだ。お嬢ちゃんは?」
少女は振り返り、にっこりと微笑んだ。
「ハジメ」
アオとハジメは、田舎道を北へ向かっていた。
「へえ、わざわざ秋田から。お願いでもするん?」
「まあ、そんなところ」
故郷のこと、道中のこと、アオの話をハジメは興味深く聞いていた。
「それにしても、割と外れた場所にあるんだな」
周辺は緑が多く、田畑もあちこちに見える。
「てっきり町の中心に建ってると思ってたよ」
アオがそう言うと、ハジメは複雑な表情をした。
すると、前方の藪が分かれて、一頭の猪が現れた。
「あれは」

「ここらでは珍しいもんやあらへんよ。けど、刺激せんように…」
その言葉が終わらぬうちに、猪は二人に猛進して来た。
「ハジメ!」
アオはハジメを突き飛ばし、自分も身をかわした。
猪はすさまじい勢いで通り過ぎる。
牙がアオの足をかすめ、ジーンズの太ももが裂けた。
「な…なんで…」
草の上に転がったハジメが、呆然としている。
アオは、猪の異様な雰囲気を感じ取った。
(妖か)
猪はゆっくりと向き直り、暗い瞳でアオを見た。
互いの視線が交錯すると、猪は再び疾走した。
(こいつはオレたちを獲物に決めた。やるしかねえ!)
アオは右足を突き出し、猪の牙を正面から受け止めた。
両者は膠着状態となったが、それは数秒と続かなかった。
猪は首を捻ると、アオの右足を銜え、放り投げた。
アオは受身を取り、すぐさま立ち上がる。
ジーンズが膝から千切れ、スニーカーも脱げていた。
「アオさん、その足…」
ハジメがひどく驚いた顔をしている。
露わになったアオの右足は、馬の足の形をしていたのだ。
蹄に付けた蹄鉄が、鈍い輝きを放っていた。
「説明は後だ、ハジメ。ここはオレが何とかする」
アオの動きは、まさしく馬のように素早かった。
襲いくる牙を蹄鉄で防ぎつつ、アオは猪に何発も蹴りを入れた。
しかし、猪は全くこたえる気配がない。
次第にアオの息が上がってきた。
(なんて頑丈さだ、こいつ)
猪は、じれったそうに前足で地面を掻いた。
すると、見る見る牙が巨大化した。
(今から本気かよ…!)
アオの首筋に、冷たい汗が流れた。
「アオさん無茶や!逃げて!」
ハジメが、思わず草叢から飛び出した。
「馬鹿、隠れてろ!」
猪がすかさずハジメに照準を変え、走り出した。
アオは全力で走り、ハジメを抱きしめた。
次の瞬間、猪は二人を撥ね飛ばした。
二人は、大木の幹に叩きつけられた。
庇われたハジメは軽傷だったが、アオは動けずにいる。
それでもどうにか身を起こし、口に溜まった血を吐いた。
この間も、猪はじりじりと二人に迫っていた。
アオの目は、まだ死んではいなかった。
「オレは…強くなるために、ここまで来た…」
「あいつを見返して…認めさせてやるんだ…」
「絶対に…諦めてたまるか!」
アオは這いつくばり、立とうとしてもがいた。
その時、アオの右足を衝撃が貫いた。

振り返ると、ハジメが蹄鉄を殴りつけていた。
「しゃあないなあ」
アオは、突然、体の内側が熱くなるのを感じた。
なぜか右目の視界は遮られたが、全身に力がみなぎっていた。
「これは…」
「長くは持たんで。決めや!」
アオは立ち上がり、猪の方を鋭く睨んだ。
雷のような速さで距離を詰め、そして、跳んだ。
「ウラアアア!」
アオの右足は猪の牙を蹴り砕き、顔面に深々と食い込んだ。
****
「天目一箇神の、分御霊かあ」
地べたに座り込んだアオが、驚きの声を上げた。
「そっちこそ、蒼前さんとは思わんかったわ」
ハジメは、懐から取り出したハート柄の眼帯を付けた。
「それにしても、すごい神懸りだったな…」
神の神格をまとう神懸り――その力でアオは猪を倒したのだ。
「さっきは蹄鉄を通してうちの神格を貸したけど、
専用の神器を作れば、もっと強うなるはずやで」
アオは顔を輝かせた。
「そういうのをオレは教わりたいんだ!早く案内してくれよ!」
「うちら怪我人やん。も少し休憩して…」
渋るハジメを強引に背負い、アオは威勢よく駆け出した。
終
引用元

蒼前様のアオ
秋田からやってきた馬神。
強い神を探している。

天目一箇神のハジメ
アメノマヒトツの分御霊の一人。
芸術肌で気難しく、いつもおしゃれが暴走している(指摘すると怒る

妖
イノシシの妖。
ハジメ曰く、刺激しなければ無害らしいがなぜかアオに襲い掛かる。
何者かに操られていた可能性も。

謎の悪霊
東からやってきた悪霊。あらゆるものに取り憑いて害をなす。
どこで覚えたのか、神通力に長けており神々の手から逃れ続けている。
噂では、復讐のため力をつけている最中だとか。
作者のおことば
SSの元になったのは、メインキャラクターの私服コーデイラスト…なんですが、描いた方がアカウントを消したので断片しかお見せ出来なくて。
元絵は著作権の関係でお見せできませんが、イラストを元に私が書いた絵があるのでこれで。

69話より
元絵はヒトツメですが、SSは別人なので変えときました。
髪型がおかしなことになっているのは、現在絶賛スランプ中につきリハビリの真っ最中。
いつもと同じじゃスランプは抜けられない!普段と違うことをしろ!!派手にいけ!!!
ということであんなことに。


気難しそうな印象を受けたので、芸術家きどり→奇抜なヘアスタイルに
…ハートの分御霊とも読み取れますが、確定する要素もなかったしリハビリということでごめんね🙇♂️🙇♂️🙇♂️

右下の分御霊
3部の構想では、京都弁で嫌味な話し方をする予定だったので結構近いかも?
いや、SSは嫌味ではないし方言は…京都弁?違う?
東北の民には判断つかないぜ・・・
以上、天目一箇神SSでした。
SSスレの隠れ秋田県民様、ありがとうございました!
……え、なに?
なんか足しただろって?
一番最初に浮かんだ絵がこれなんだもの仕方ないじゃない。

無害なシシが襲ってくるということは黒幕がいる…?
………ハッ!!(閃
早速ですがどうぞ!!
「天目一箇神異聞」
作:SSスレの隠れ秋田県民
絵:秋田LV3
兵庫県、多可郡。
朝霧に覆われた山道を、一人の女が歩いていた。
トレーナーにジーンズ、スニーカーという軽装である。
ショートカットの髪が、風を受けてなびいた。
早朝、薄闇の中に光が差してくる。
霧が徐々に晴れ、目を凝らすと、南の方に家並が見えた。
「もうすぐだな」
張り詰めた顔で、女は呟いた。
****
しばらくして、町の中に困り顔の女がいた。
女には、捜し物があった。
町に入って色々と巡ったが、それが見当たらないのだ。
空はすっかり明るくなっていた。
(ここにあると思ったんだけど)
やはり、誰かをつかまえて尋ねるべきだろうか。
ともかくもう少し探してみようと、女は早足になった。
そして、四つ角に差し掛かったところで、何かとぶつかった。
見ると、ジャンパースカート姿の少女が、尻餅をついていた。
ものもらいでもあるのか、右目にガーゼの眼帯をしている。
「おっと…大丈夫?」
女が心配すると、少女はスカートを払いながら立ち上がった。

「危ないやんか、姉さん。気ぃつけや」
「ご、ごめん」
少女のしっかりした様子に、女はたじろいだ。
余所者とわかるのか、少女はじっと女を見つめている。
居心地の悪さに堪えきれず、女が口を開いた。
「ところでさ、この辺に神社はないかな」
「神社?」
「天目一神社っていうんだけど…」
子供に聞くようなことではないな、と我ながら思った。
「知っとるよ」
事も無げに答えると、少女はすたすたと歩いて行く。
どうやら案内するつもりらしい。
女が慌てて後を追う。
「あ、オレはアオっていうんだ。お嬢ちゃんは?」
少女は振り返り、にっこりと微笑んだ。
「ハジメ」
アオとハジメは、田舎道を北へ向かっていた。
「へえ、わざわざ秋田から。お願いでもするん?」
「まあ、そんなところ」
故郷のこと、道中のこと、アオの話をハジメは興味深く聞いていた。
「それにしても、割と外れた場所にあるんだな」
周辺は緑が多く、田畑もあちこちに見える。
「てっきり町の中心に建ってると思ってたよ」
アオがそう言うと、ハジメは複雑な表情をした。
すると、前方の藪が分かれて、一頭の猪が現れた。
「あれは」

「ここらでは珍しいもんやあらへんよ。けど、刺激せんように…」
その言葉が終わらぬうちに、猪は二人に猛進して来た。
「ハジメ!」
アオはハジメを突き飛ばし、自分も身をかわした。
猪はすさまじい勢いで通り過ぎる。
牙がアオの足をかすめ、ジーンズの太ももが裂けた。
「な…なんで…」
草の上に転がったハジメが、呆然としている。
アオは、猪の異様な雰囲気を感じ取った。
(妖か)
猪はゆっくりと向き直り、暗い瞳でアオを見た。
互いの視線が交錯すると、猪は再び疾走した。
(こいつはオレたちを獲物に決めた。やるしかねえ!)
アオは右足を突き出し、猪の牙を正面から受け止めた。
両者は膠着状態となったが、それは数秒と続かなかった。
猪は首を捻ると、アオの右足を銜え、放り投げた。
アオは受身を取り、すぐさま立ち上がる。
ジーンズが膝から千切れ、スニーカーも脱げていた。
「アオさん、その足…」
ハジメがひどく驚いた顔をしている。
露わになったアオの右足は、馬の足の形をしていたのだ。
蹄に付けた蹄鉄が、鈍い輝きを放っていた。
「説明は後だ、ハジメ。ここはオレが何とかする」
アオの動きは、まさしく馬のように素早かった。
襲いくる牙を蹄鉄で防ぎつつ、アオは猪に何発も蹴りを入れた。
しかし、猪は全くこたえる気配がない。
次第にアオの息が上がってきた。
(なんて頑丈さだ、こいつ)
猪は、じれったそうに前足で地面を掻いた。
すると、見る見る牙が巨大化した。
(今から本気かよ…!)
アオの首筋に、冷たい汗が流れた。
「アオさん無茶や!逃げて!」
ハジメが、思わず草叢から飛び出した。
「馬鹿、隠れてろ!」
猪がすかさずハジメに照準を変え、走り出した。
アオは全力で走り、ハジメを抱きしめた。
次の瞬間、猪は二人を撥ね飛ばした。
二人は、大木の幹に叩きつけられた。
庇われたハジメは軽傷だったが、アオは動けずにいる。
それでもどうにか身を起こし、口に溜まった血を吐いた。
この間も、猪はじりじりと二人に迫っていた。
アオの目は、まだ死んではいなかった。
「オレは…強くなるために、ここまで来た…」
「あいつを見返して…認めさせてやるんだ…」
「絶対に…諦めてたまるか!」
アオは這いつくばり、立とうとしてもがいた。
その時、アオの右足を衝撃が貫いた。

振り返ると、ハジメが蹄鉄を殴りつけていた。
「しゃあないなあ」
アオは、突然、体の内側が熱くなるのを感じた。
なぜか右目の視界は遮られたが、全身に力がみなぎっていた。
「これは…」
「長くは持たんで。決めや!」
アオは立ち上がり、猪の方を鋭く睨んだ。
雷のような速さで距離を詰め、そして、跳んだ。
「ウラアアア!」
アオの右足は猪の牙を蹴り砕き、顔面に深々と食い込んだ。
****
「天目一箇神の、分御霊かあ」
地べたに座り込んだアオが、驚きの声を上げた。
「そっちこそ、蒼前さんとは思わんかったわ」
ハジメは、懐から取り出したハート柄の眼帯を付けた。
「それにしても、すごい神懸りだったな…」
神の神格をまとう神懸り――その力でアオは猪を倒したのだ。
「さっきは蹄鉄を通してうちの神格を貸したけど、
専用の神器を作れば、もっと強うなるはずやで」
アオは顔を輝かせた。
「そういうのをオレは教わりたいんだ!早く案内してくれよ!」
「うちら怪我人やん。も少し休憩して…」
渋るハジメを強引に背負い、アオは威勢よく駆け出した。
終
引用元
1950年のはずだけど好き勝手に妄想した話ができました。 「天目一箇神異聞」
登場人物

蒼前様のアオ
秋田からやってきた馬神。
強い神を探している。

天目一箇神のハジメ
アメノマヒトツの分御霊の一人。
芸術肌で気難しく、いつもおしゃれが暴走している(指摘すると怒る

妖
イノシシの妖。
ハジメ曰く、刺激しなければ無害らしいがなぜかアオに襲い掛かる。
何者かに操られていた可能性も。

謎の悪霊
東からやってきた悪霊。あらゆるものに取り憑いて害をなす。
どこで覚えたのか、神通力に長けており神々の手から逃れ続けている。
噂では、復讐のため力をつけている最中だとか。
アオとハジメの妖退治SS、いかがでしたでしょうか?
作者のおことば
SSの元になったのは、メインキャラクターの私服コーデイラスト…なんですが、描いた方がアカウントを消したので断片しかお見せ出来なくて。
元絵は著作権の関係でお見せできませんが、イラストを元に私が書いた絵があるのでこれで。

69話より
元絵はヒトツメですが、SSは別人なので変えときました。
髪型がおかしなことになっているのは、現在絶賛スランプ中につきリハビリの真っ最中。
いつもと同じじゃスランプは抜けられない!普段と違うことをしろ!!派手にいけ!!!
ということであんなことに。
気難しそうな印象を受けたので、芸術家きどり→奇抜なヘアスタイルに
…ハートの分御霊とも読み取れますが、確定する要素もなかったしリハビリということでごめんね🙇♂️🙇♂️🙇♂️

右下の分御霊
3部の構想では、京都弁で嫌味な話し方をする予定だったので結構近いかも?
いや、SSは嫌味ではないし方言は…京都弁?違う?
東北の民には判断つかないぜ・・・
以上、天目一箇神SSでした。
SSスレの隠れ秋田県民様、ありがとうございました!
……え、なに?
なんか足しただろって?
一番最初に浮かんだ絵がこれなんだもの仕方ないじゃない。

無害なシシが襲ってくるということは黒幕がいる…?
………ハッ!!(閃
おまけ
そう言われると出しにくくなるのがこちらのピクチャ https://t.co/KSQaqU3lGX pic.twitter.com/ZpgHTCrQ8a
— LV3(れべるさん)@リクエスト停止中 (@osLV3) April 15, 2022
- 関連記事
-
- 124話より、正しさよりらしさと問題があるコメント
- 近況とQOL上げと次回更新のお知らせ
- アオの旅SSをいただいたので足してみました!
- いつもの近況と4月は荒療治でGO!
- 生きたキャラクターと成仏と勢いよ
行間を読むとはこのことか!